永遠のロングセラーはどう生まれたか。みすず書房と『夜と霧』の60年 (2/7ページ)
目を覆いたくなるような資料がついた旧版も、新訳で出版した新版も、両方合わせてみすず書房を支えてきたといえます」

(写真=みすず書房・守田省吾氏 提供・みすず書房)
なぜ、『夜と霧』は日本人の心に深く刺さり、私たちに勇気を与え続けてきたのだろうか。
それには本書の成り立ちから説明する必要があるだろう。
■1956年、センセーショナルな広告とともに日本語版刊行『夜と霧』の原書は前述の通り1946年、オーストリアのウィーンで出版された。
著者はヴィクトール・フランクルというユダヤ人精神科医で、1942年から1945年までドイツ軍によって強制収容所に収容されていた。
その際の経験をもとに書かれたのがこの本である。
「一心理学者の強制収容所体験」というタイトルに少しその雰囲気を漂わせているが、フランクル自体は本書をあくまで「一心理学者」の体験として出版したいと考えていたようだ。
実際、1946年に出版された原書初版の表紙には、著者名が書かれていない。表紙をめくり、その次のページにフランクルの名前が登場する。
また、出版後の注目度は高くなかった。
『夜と霧』を追いかけた河原理子氏のノンフィクション『フランクル「夜と霧」への旅』(朝日文庫)によれば、売れずに2刷で絶版扱いになっていたという。
世界的ベストセラーの第一歩は実は「日本でのヒット」である。
1956年、みすず書房から『夜と霧』というタイトルで出版された本書は、新聞の書評などを中心に絶賛を浴びた。また、みすず書房のセンセーショナルな文句による書籍広告も功を奏したと、守田氏は語る。