【小説】国芳になる日まで 〜吉原花魁と歌川国芳の恋〜第3話 (1/6ページ)

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【小説】国芳になる日まで 〜吉原花魁と歌川国芳の恋〜第3話

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【小説】国芳になる日まで 〜吉原花魁と歌川国芳の恋〜第2話

文政七年 正月(3)

雀色の夕空が、青花紙を水に溶いて裾から刷き広げたように、みるみる青紫に染まった。やがてその中に早くも夕星が白く輝き始めた宵の口、

「もうじき暗くなるし、帰るか」

吉原遊廓京町一丁目の表通りにいた男は、ほつれた鬢の毛束の条を撫ぜ、ふうと息を吐いた。

今年の吉原遊廓での凧売りはこれで終わりだ。数十持ち込んだ凧は今年もほとんど全部捌けた。籠の中に残っているのは、早速子どもが壊して泣きながら持ってきたのが一つと、あとは三つ四つだけである。

毎年決まって正月二日だけ吉原遊廓に凧売りに来るのは、二日ならばまだ休みの禿(かむろ)たちが大勢路傍に遊んでいるからであった。娑婆の子どもは明日も明後日も大手を振って遊んでいられるが、廓内(なか)の子どもたちはそうはいかない。

表通りに等間隔で置かれているたそや行燈を一つ、二つ、三つと数えながら、仲之町に出る木戸門をかいくぐろうとした時、遠くからいつもは聞こえない吉原の子どもたちの笑い声が聞こえてきて男の足が一瞬止まった。

(この声が聞きたかったんだ)

見上げると、自分の描いた絵凧が風を含んで誇らしげに夕空を飛んでいる。

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