【小説】国芳になる日まで 〜吉原花魁と歌川国芳の恋〜第27話 (2/6ページ)
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目を閉じると浮かぶのは国芳の笑顔である。
一通り終えて鏡台を隅に片付け部屋から出ると、廊下の向こうから歩いてきた振袖新造と禿(かむろ)たちがみつの顔を見るなり驚いて口々に叫んだ。
「姐さん、くちびるが!」
「くちびるが綺麗!」
「姐さんの下くちびるが、綺麗な玉虫色に光っていんす!」
「どう?似合う?」
みつがいたずらっぽく笑うと、
「あいな、似合っていんす!粋ちょんざんす!松葉屋の看板、朝霞花魁も姐さんには敵いんせん」
少女たちの心に、憧れの紫野花魁の玉虫色の下くちびるは鮮烈であったらしい。きらきらした目がみつに向けられた。その時である。
「何だい、休みの日にいけうるさいね!」
遣り手が階段上の遣り手部屋から飛び出してきた。
「おはよう、お姐はん」
みつの顔を見るなり、ヤッ、と遣り手は飛びのいた。
「紫野!どうしたんだえ、その緑のくちびるは!」
「うふふ、やっぱし変かしら。この子たちは粋ちょんだって言ってくれたんだけれど」
「下くちびるだけてらてらしてやがる。変じゃねえのかえ」
「ええ。変でいいの。今はこれが流行っているそうよ」
「そうかい、今時は何が流行るか分からないねえ。ほら、ガキは真似すんじゃねえよ。