【小説】国芳になる日まで 〜吉原花魁と歌川国芳の恋〜第27話 (3/6ページ)

Japaaan

油売ってるくれえならサッサと散って雑巾掛けの一つでもしとくんな!」

 

「あーい」

 

子どもたちはしょんぼりとしおらしい返事をした。が、遣り手が足を踏み鳴らして部屋に戻るのを確かめると、

 

「姐さん、姐さん」、

 

小声でみつに話しかけた。

 

「アチキは今日の姐さんのくちびる、大好きでありんす」

 

「ワチキも!」

 

「後生ですから、そのままで居てくださっし」

 

潤んだ瞳で祈るように言うものだから、みつはいつも可愛い禿たちが殊更堪らなく可愛く思えた。

 

「あ、そうだ」、

 

みつはつつっと部屋に戻り、鏡台から何かを取ってきた。

 

「これ、あげるよ」。

 

みつの微笑みとともに、唐花模様の紅猪口がそれぞれ一つずつ、少女の小さな手のひらにころんと落とされた。

 

「今様美人十二景 てごわそう(一部)」 ボストン美術館蔵

 

陽の昇りきった未の刻。

みつが手ぬぐいをかぶって京町一丁目の木戸門の外に出ると、

 

「そこな姐さん」、

 

懐かしい声が胸に響いた。

 

「笹色紅、よっく似合ってんじゃねえか」。・・・・・・

 

みつは声の方を振り返った。

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