【小説】国芳になる日まで 〜吉原花魁と歌川国芳の恋〜第27話 (1/6ページ)
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【小説】国芳になる日まで 〜吉原花魁と歌川国芳の恋〜第26話 ■文政八年 玉菊灯籠の夏(2)あと、六日。
あと、五日。
あと、あと、あと。・・・・・・
国芳が久し振りに吉原遊廓を訪れるまでの日々、みつは毎朝心の中でそう数え、ようやく約束の十三日が訪れた。
明け六つ前、みつはいつもより早く目を覚まし、鏡台の曇り一つなく磨かれた鏡を熱心に覗きこんでいた。
一つ、試してみたい化粧がある。笹色紅(ささいろべに)といい、上くちびるはいつも通り、下くちびるのみ紅を厚塗りして玉虫色に光らせる。これが文化年間から江戸の奥女中や武家の姫君の間で大流行し、今時は吉原の高級女郎はもちろん、深川の芸者なども真似をしているという。
上・下ともに渓斎英泉「当世好物ハ契」(一部)
少女の頃に熱病で色覚を失ったみつは、今まで化粧の事など教えられた通りに粉やら紅やらを肌膚に乗せるだけで、工夫しようなどとは思い至った事もなかったが、今は違う。国芳との出会いがみつの心を少しずつ変えた。
(私だって、色を楽しんでいいんだ)。
