【小説】国芳になる日まで 〜吉原花魁と歌川国芳の恋〜第32話 (5/8ページ)
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「わっちゃアこれから毎日欠かさずこの掛け守りに、めえの幸せを願う」
「そんならあたしは、国芳はんの幸せを。・・・・・・」
みつも、懐から同じものを取り出して、国芳のものと取り替えた。
国芳は、不覚にも涙を落としそうになって狼狽した。
目の前の女は出会った時と何ら変わらずに、みずみずしく美しい色を持っている。
しかし表情までもこんなに色彩豊かだったろうか。
彼女は今ようやく一点の曇りなく晴れ渡った幸せな表情をしている。
ここまで来るのに、どれほど掛かったろう。思えばみつと出会ってから二度、四季が巡った。今はもう、三度目の春を沿って歩いている。
早春に出会い、夏に戯れ、秋に語らい冬に寄り添った。そしてまた同じ春が来ても、みつと過ごす季節はいつも新しく特別で、大切だった。
隅田川の大流のように色やかたちを変えながら滔々と流れゆく日々の中で、そこにあるのはたった一つ変わらずに、湧き水のように滾々と湧き続ける澄んだ思いであった。
立祥(二代歌川広重)「 東都隅田川八重桜」国立国会図書館蔵
「あ、たんぽぽ」。・・・・・・
みつがしゃがんで、足もとの黄色い花を指した。