<東京暮らし(17)>帰って来た寅さん (3/5ページ)

左からイズミ、満男、リリー(浅丘ルリ子)(C)2019 松竹株式会社
私が今回、新作を見てみたいと思ったきっかけは、東京新聞とその月刊情報紙「暮らすめいと」で映画紹介コラムを執筆する、元東京新聞記者の大谷弘路さんから、試写が面白かったと聞いたからだ。大谷さんは渥美清さんと生前、親交があった。と言っても、渥美さんは周囲の人たちに私生活を見せる、語ることは一切なかったそうだ。それでも、大船にあった松竹の旧撮影所で、木戸御免で渥美さんの楽屋に入れた記者は大谷さんだけだったという。
「取材させてください!なんてギラギラした感じで近づいて行かない俺とは相性がよかったのよ、きっと。二人でこたつに寝っ転がりながらね、渥美さんが『最近どの映画がいいですか』なんて聞いてきて、俺がお薦めの作品を教えたりね。他愛もない話をよくしたね」(大谷さん)
ところで、こうしたコラムを書かせてもらっているが、実は私は往年の大ファンだなどと威張れるほどの「寅さん通」ではない。恥ずかしながら劇場で見たのはたった1作、確か1978年の第22作「男はつらいよ 噂の寅次郎」で、マドンナは当時大人気だった大原麗子さん(役名は早苗!)の回だったと思う。お正月休みで映画館は大混雑、一番後ろで立ち見したのを覚えている。あとはテレビ放映がある度、繰り返し幾つかの作品を見たぐらいなのだが、それでも寅さんの世界には、どこか魅かれるものがある。
大谷さんの感想を聞き、私もマスコミ向け試写会に足を運んでみた。