<東京暮らし(17)>帰って来た寅さん (4/5ページ)

左から三平(北山雅康)、満男、源公(佐藤蛾次郎)(C)2019 松竹株式会社
暗くなった試写会場に、聞き慣れた「♪チャ~チャララララララ~」の前奏が流れた途端、懐かしさに既に目頭が熱くなってしまう。4Kデジタル修復でよみがえった映像では、寅さんと家族、ご近所さんとの丁々発止のやりとりに笑い、寅さんのよどみない東京弁に酔い、温かい名台詞の数々に勇気づけられる。
満男役の吉岡秀隆さんがまたいい。少年の頃とどこか変わっていない、照れたような何気ない表情に純粋さが垣間見える。

新作でもさくらは健在だ(C)2019 松竹株式会社
よみがえったシリーズ映像の中で、名優達の生き生きと輝いていた頃の姿が映し出されると、まるで日本映画の玉手箱を開けたような感動を覚え、またも目頭が熱くなる。全編を通して心を動かされるのは、失われた全てのものへの郷愁を感じ、生涯をかけて寅さんを演じた渥美清さんの役者魂に胸を打たれるからだろうか。
「男はつらいよ」シリーズが、ちょうど自分が育ってきた昭和の背景と重なっている世代だからかとも考えたが、上映後、試写室の出口で松竹の宣伝部の方と話して、それだけではないと教えられた。
松竹の社内試写で、寅さんをリアルタイムで見ていなかった若い社員さんたちも泣いていたというのだ。若者の心にも響いたのなら、まさしくこの映画が、属している年代や環境を超えて人の心に届く、普遍性を持っているということではないだろうか。日本人の心には、きっとそれぞれの寅さんがいるんだろう。