<東京暮らし(17)>帰って来た寅さん (1/5ページ)
<文 中島早苗(東京新聞情報紙「暮らすめいと」編集長)>
映画「男はつらいよ」と言えば、テキヤの格好で旅を続けるフーテンの寅を、多くの日本人が共通の映像として思い浮かべることができる。それだけではない。「♪チャ~チャララララララ~」という山本直純作曲の前奏のメロディと、星野哲郎作詞の歌が、条件反射的に脳内を流れ始める人も少なくないはずだ。
1969年の第1作公開から、渥美清さん逝去翌年の97年に公開された第49作までの28年間劇場で、そしてその後も繰り返しテレビ放映で多くの日本人に愛され続けてきた寅さんが、この年末第50作「男はつらいよ お帰り 寅さん」でよみがえることになった。
左から満男、イズミ、さくら、博 (C)2019松竹株式会社
まるで日本映画の玉手箱を開けたよう
あらためて渥美清さんの紹介をしておこう。1928年生まれ、東京都台東区出身。53年には浅草のフランス座に入り、63年「拝啓天皇陛下様」(野村芳太郎監督)で映画俳優としての地位を確立。68年にフジテレビで放映された連続ドラマ「男はつらいよ」(山田洋次脚本)では、打合せで少年時代に憧れたテキヤの思い出を生き生きと語る渥美さんの姿に魅了された山田さんがイメージをふくらませ、主人公「フーテンの寅」が生まれたという。
ドラマは好評、翌69年に制作された同名の映画第1作でも、引き続き主演の車寅次郎を演じる。以降「男はつらいよ」は国民的映画として、また渥美さん演じる寅さんは日本中の多くの人に親しまれてきた。96年8月に病でこの世を去る日まで、他の映画やテレビ、舞台出演を断って寅さんの役だけを演じ続けた、他に例を見ない俳優と言える。
そんな寅さんが、第1作公開から50周年となる今年、最新作で帰って来た。新しく撮影された登場人物たちの「今」を描く映像と、4Kデジタル修復されてよみがえる寅さんのシリーズ映像で紡いだ、新たなる「男はつらいよ」の物語だ。