あなたが知らない「絵の具職人」の1日 8時間ずっと、同じ色を見つめ続けて... (5/6ページ)
顔料によって固まりやすかったり、熱を持ちやすかったりという特徴もあり、状況を見ながらローラーのかけ方を変えているそうだ。
1人が1日でつくれるのは1色で、毎日、足りなくなった色から補充していくという。
順調にいけば8時間ほどで絵の具は仕上がるそうだが、それ以上かかるときもあるそうで、「重たいし、夏はちょっと辛いですね」と鈴木さん。
絵の具を作る鈴木さん(公式ツイッターより)
「顔料にもよるんですけど、結構重たいんです。チタンホワイト(白色の絵の具)とかは異常に重たいのでなかなかの肉体労働になります」(鈴木さん)
そんな過酷な作業を経て迎える絵の具が出来上がる瞬間は、とても印象的なものなのだそう。
「(絵の具を)練っていると、ある段階で表情が変わるんですよ。しっとりと色っぽくなるというか、『あ、絵の具になってきた』という瞬間があって。その時はやっぱりゾクゾクっとしますよね」(鈴木さん)
絵の具の表情が変わる――。それが具体的にどんな現象なのか、言葉にはしづらい、と鈴木さんは話す。
「配合とか、だいたい決まってはいるんですね。この色を作るために、これを何グラム、何グラム、みたいな。でもそれを使って同じようにやっても、毎回同じにはできないんです、なぜか。色は一緒なんですけど、何かが違う時がある」(鈴木さん)
そんな時、どうやって絵の具を完成させるかというと、「最終的には勘になる」。その勘を培うためには絵の具作りの経験を積むことが必要で、鈴木さん自身も「最近はなんとなくわかるようになってきた」という段階。絵の具の完成は、師匠と相談して判断しているという。
「絵の具作りには、こうすれば良いという正解がない。だからこそ、仕上がった時、出来たものが愛おしいですよね。