犬や馬をパートナーとする「動物性愛者」。その「禁忌」の先にあるものとは? (8/8ページ)
ペニスを悪者にすることで、確かに分かりやすく二項対立を作れる。しかし、「性暴力の本質はもっと別のところにある」と警鐘を鳴らすのだ。
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――人文の研究対象は「人間」ですが、今回の研究は性的な行為をも含む関係の片割れが動物であるということが重要です。動物が何を考えているのか、私たちは知る由もない。
濱野:そうなんです。人間と動物の関係についての研究は人文分野でも今、人気のジャンルになってきています。私の研究もその中の一つに属するのですが、私自身はずっと人間を中心に見てきました。おっしゃる通り、犬の気持ちは分かない。私も、できるかぎり犬を観察し理解しようとしたけれど、私には明確な答えが見つからなかったです。だから、私は犬に寄り添う人たちにできる限り接近することで考察を進めようと思いました。
――だから「動物から誘われる」という言葉にも対しても疑心があった。
濱野:そうです。動物行動学や生態学の研究者だったら、私のような見方はしなかったかもしれません。私は、今回はそちらの分野まで踏み込む余裕がなかったです。ですので、本書でも、人間にとってのセクシュアリティの問題に焦点を置いています。
(後編:「無駄な時間が9割」。でも、その時間が開高健ノンフィクション賞受賞作を生んだ)
■濱野ちひろさんプロフィールノンフィクションライター。1977年、広島県生まれ。2000年、早稲田大学第一文学部卒業後、雑誌などに寄稿を始める。インタビュー記事やエッセイ、映画評、旅行、アートなどに関する記事を執筆。2018年、京都大学大学院修士課程修了。現在、同大学大学院博士課程に在籍し、文化人類学におけるセクシュアリティ研究に取り組む。