「無駄な時間が9割」。でも、その時間が開高健ノンフィクション賞受賞作を生んだ (6/9ページ)

新刊JP

なぜだろうとずっと考えながら彼の生活を観察するのが、文化人類学的な面白さだと思うんです。そうこうしていると、ある日、「ミヒャエルの動物との付き合い方なら猫に名前を付ける必要はないんだ」とふと気づいて。それはフィールドの中で見つけた問いですね。調査中は、そうした細かい問いをずっと揉んでいるみたいな日々なんですよ。

■『聖なるズー』に対する様々な声にどう向き合っていくか

1月8日現在、本書に対しての評価はおおむね好意的だ。ただ、その一方で動物性愛に対する懐疑的な目を持っている人もいなくはない。

これから『聖なるズー』はますますこの日本に広がっていくだろう。その時に、本書はどんな読まれ方をして、どんな声が上がるのだろうか。本として出版されたからこそ避けては通れない道について、濱野さんはどのように考えているのか。

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――おそらく、この『聖なるズー』はさまざまな読まれ方をなされると思います。賞賛の声が上がる一方で、批判的な意見も出てくるでしょう。濱野さんご自身はそうした声とどのように向き合っていこうとお考えですか?

濱野:この本が出て少しずつ私の元に感想が届くようになりましたが、嬉しい声もあるし、私自身が混乱してしまう声もあります。おっしゃる通り、読まれ方は人それぞれだという実感はありますね。

こうしてインタビューしただいたときも、インタビュアーさんそれぞれ着目される点が違っていて、一様の読まれ方がなされない本だということを痛感しました。確かに私自身もこの本には論点をたくさん詰め込んでしまいましたけれど(笑)。

だから、どの部分が議論の焦点になっていくのか、実はまだ予測がついていないんです。でもこの本を通して、いろんなことを議論してほしい。セクシュアリティのことも、性暴力のことも、身近な動物との関係のことも、その他のことも。そこで上がる批判の声は…覚悟しています。

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