「無駄な時間が9割」。でも、その時間が開高健ノンフィクション賞受賞作を生んだ (8/9ページ)

新刊JP

濱野:その点については考え中ですが、国柄は関係しているでしょうね。一つは特に都市部ではセクシュアリティに対して解放的な風潮があること。もう一つは動物との近さがあります。ドイツは動物保護先進国といわれていて、動物を「モノ」として見ないという態度がドイツ人の中に根付いているんです。

『聖なるズー』というタイトルは、かつてゼータの中心人物だったエドガーという男性が、今のゼータのメンバーたちの倫理観が強すぎることを揶揄して「やつらは“セイント・ズー”さ」と発言したその言葉を使っています。本書に登場したズーたちは、動物性愛者の中でも特に倫理的な人たちといえます。ただ、それでも批判の声は上がると思います。

――『聖なるズー』が本になったことについてゼータのメンバーは?

濱野:すごく喜んでいますよ。ズーが議論の俎上に載せられることが、彼らにとっては大きなことなんです。カミングアウトをせずに生きていくことはいくらでも可能な中で、彼らはわざわざ声をあげて、10年間組織としてやってきた。そこに私がリサーチに訪れて、本を書いた。彼らにとっては大ニュースなんです。

――しかも日本で、というところも。

濱野:そうですね。この本が出せて、賞までいただけて、理解を示してくれる方が早い段階からいらっしゃるということは、日本だからだと思います。日本には自然との連綿としたつながりを背景にした自然観がありますよね。動物と私たち人間は地続きのところで暮らしていて、どんな動物にも魂があるというのが、私たち日本人の考え方です。その部分では、ヨーロッパの人々よりも、ズーたちを理解しやすいように思います。

――記念碑的な一冊ですが、どんな人に読んでほしいですか?

濱野:当初は女性の読者に届けたいと思っていましたけれど、20代、30代、40代の方々からは男女問わず共感の声をいただいています。

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