あらゆるものに神は宿る!絵師・伊藤若冲の名作「動稙綵絵 池辺群虫図」をじっくり鑑賞&解説 (7/8ページ)
「もう虫を見るのは嫌だ」と思っている方もいらっしゃるかもしれませんね。人間は“足があるものが嫌いな人”と、“足の無いものが嫌いな人”とに分かれると言われています。
私はクモなど足の多いものが嫌いですが、蛇やミミズは平気です。私の友人には蝶が嫌いな人がいます。「蝶が嫌いだ」といって一匹の蝶に騒いでいる友人は私の目には奇異に見えます。逆もまたそうなのでしょう。
しかしこの『動植綵絵』“池辺群虫図”に描かれているクモを見ても、あまり気味悪く感じません。とても精密に描かれているのですが、その表現に何か柔らかさのようなものが含まれているように感じるのです。これから獲物を捉えようとしているというのに。
伊藤若冲は子供の頃から、少し他の子供とは違っていたようです。それは大人になっても変わらず、若冲が『動植綵絵』を寄進した、相国寺の大典顕常禅師が書いた書物によると、“(若冲は)幼い時から学ぶということが大の嫌い、書も下手なら、技芸百般、自慢じゃないが、ひとつたりとも身につけたものはない”と書かれています。
伊藤若冲の生家は京の錦市場の裕福な青物問屋でしたから、花街での付き合いなどもあったでしょう。当時、花街を盛り上げていたのは裕福な商人たちでした。そんなときに詩歌の一つもひねりだせないようでは、人付き合いもあまり上手いとは言えなかったかもしれません。