死ぬまで秘めた恋心……一番槍を果たしながら「賤ケ岳の七本槍」から洩れてしまった名将・石川一光【下】 (2/6ページ)
通称は長松、後に頼明)ともども、四兄弟そろって幼少の頃から秀吉の馬廻として仕えた子飼いの若武者です。
柴田勝家との雌雄を決する出陣前夜、兵助は秋田助右衛門(あきた すけゑもん)と並んで旗奉行を拝命しますが、大役をやっかんだ市松(いちまつ。福島正則)が因縁をつけます。
「戦場(いくさば)にて旗ばかり振り回したところで敵は倒せぬ……まぁ、槍働きよりも己を目立たせ、御屋形様に手柄顔をする兵助には、誂(あつら)え向きの役目じゃのう(嘲笑)」
「市松、いま何と申したか……聞き捨てならぬ!」
激昂した兵助は脇差に手をかけ、あわや刃傷沙汰に及ぼうとした時、虎之介(とらのすけ。加藤清正)に制止されます。
「市松、兵助、双方よさぬか!明日は柴田との決戦ぞ!このようなところで無駄な血を流すでない!」
……不承不承に引き下がった兵助は「明日(みょうにち)我が後影を見よかし(自分の背中を見るがいい=自分が一番槍の手柄を立てる)!」と啖呵を切ったのでした。