死ぬまで秘めた恋心……一番槍を果たしながら「賤ケ岳の七本槍」から洩れてしまった名将・石川一光【下】 (4/6ページ)
「兵助!わしにこれを被らせ、わしが一番槍を果たしたら、それを自分(兵助)の手柄と申す気か!見下げ果てたわ!」
完全に勘違いした孫六は激昂、兵助から兜を引ったくるとこれを地面に叩きつけ、これでもかとばかり踏みにじります。
違う、そのようなつもりは毛頭……なかった兵助ですが、好きな人の前で言い訳がましい事はしたくないと踵を返し、翌日は兜をかぶらずに出陣しました。
壮絶な討死、そして告げられた思い兜を着けず決戦に臨み、宣言どおりに一番槍を果たした兵助。落合芳幾「太平記英勇伝 石川兵助貞友」より。
そして賤ケ岳の決戦当日。兵助は宣言どおりに一番槍で敵陣に突入し、大いに暴れ回りましたが、柴田方の与力・拝郷五左衛門家嘉(はいごう ござゑもんいえよし)の繰り出した槍に左目を貫かれて討死してしまいます。
「兵助!」
その背中を追いかけて来た市松は拝郷を討って仇を取り、戦は勝利の内に終わりました。