死ぬまで秘めた恋心……一番槍を果たしながら「賤ケ岳の七本槍」から洩れてしまった名将・石川一光【下】 (5/6ページ)

Japaaan

「そなた……兜さえ着けておれば……」

戦後の論功行賞では市松が一番槍として秀吉から賞されましたが、市松は「それがしの前に、兵助が先駆けておりました」と申し出、不惜身命の武功を惜しんだ秀吉は、兵助の代わりとして末弟の長松(石川一宗)に一番槍の感状と知行1,000石を与えたのでした。

拝郷を倒し、兵助の仇をとった市松。歌川豊宣「新撰太閤記 賤ヶ岳の戦い 六枚続」

「……あの時、兵助が兜さえ着けておればと、未だに惜しまれる……」

後に市松が兵助のことを思い返すと、それを聞いた孫六が答えます。

「そう言えば、兵助が戦の前夜に兜を差し出してな。わしを影武者にでもする気かと打ち捨てたが、本当にあの兵助が、そのような事を考えたのじゃろうか……」

話を聞いた長松は、亡き兄・兵助が孫六に寄せていた思いを打ち明けたのでした。

「そうだったのか……」

「恋死なん 後の思いに それと知れ ついに洩らさぬ 中の思いは」

【意訳】私が死んだら、火葬の煙に感じて欲しい。生涯打ち明けることのなかった、あなたへの恋心を。

※『葉隠聞書』より。

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