「理想の女性」にただ一つ欠けていたもの…源氏物語の正ヒロイン「紫の上」の憂鬱【上】 (2/5ページ)
「え?10代前半の少女or幼女に?」
「光源氏って、もしかしてロリコン(幼女趣味)?」
そう思うのも無理はありませんが、光源氏はロリコンよりもむしろマザコンで、彼は3歳の幼さで母・桐壺更衣(きりつぼのこうい。桐壺帝の側室)を亡くし、継母となった藤壺中宮(ふじつぼのちゅうぐう。桐壺帝の皇后)に、その面影を求めました。
どういう訳か藤壺中宮は桐壺更衣と瓜二つの生き写しだったそうで、年齢が近いこともあって大興奮した光源氏ですが、いくら大好き(むしろ相思相愛)でも母子の関係ですから、おいそれと手は出せません。
(※結局後で手を出してしまうのですが、そのエピソードはまた別の機会に)
元服して一人前の男性となった光源氏にとって、なおさら近づき難く、遠い存在となってしまった藤壺を想っては憂鬱な日々を過ごしていたところに出会ったのが紫でした。
実は兵部卿宮は藤壺の兄であり、その娘である紫は「藤壺の姪」……道理でそっくりな訳です。
「この娘を、ウチの養女にいただけないでしょうか!」
理想的な容姿を生まれ持った少女を手元に置いて「理想の女性」に育て上げ、将来は……そう目論んだ光源氏でしたが、北山の尼君は冗談だろうと相手にしません。
いくら先帝の孫娘とは言え、実の父親から養育放棄されたような後ろ盾のない女性を妻に迎えても、政略的・経済的なメリットはないからです(※そういう時代でした)。
(まさか、かの高名なるプレイボーイ・光源氏がロリコンな筈はなかろうし……)
藤壺中宮に対する密かな恋心など知る由もなく、適当に「また年頃になったら、改めて」とあしわられてしまいます。
「むむむ……」
ひとまずは引き下がった光源氏でしたが、やがて北山の尼君が亡くなると「兵部卿宮の元へ戻っても、幸せになれまい」という大義名分?の下、紫を拉致してしまったのです。