「理想の女性」にただ一つ欠けていたもの…源氏物語の正ヒロイン「紫の上」の憂鬱【上】 (4/5ページ)
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葵の上は光源氏の従姉に当たり、本来なら春宮(とうぐう。皇太子殿下)妃になる筈だったのに臣下である光源氏に嫁いだためか、プライドが邪魔をして素直になれず、ようやく打ち解けたと思った矢先に死別。
「こんなことになるなら、いっそ冷淡なままの方がよかった……」
「そんなことを言ったら、奥様がおかわいそう。たとえ最期のひとときであっても、心から愛し合えることこそ、夫婦として何よりも尊いのですから」
まだあどけなさを残す少女でありながら、誰に対しても深く思いやりを持っていた紫の成長を慰めに喪の明けた光源氏は、紫の裳着(もぎ。女性の成人式)と共に彼女をパートナーに迎えたのでした。
「これからは比翼の鳥、連理の枝(※1,2)が如く生きて行こう」
「えぇ……」
両親から疎まれていた可憐な少女が、誰もが羨むパーフェクト貴公子に見初められ、二人は末永く幸せに……暮らせたら「めでたしめでたし」だったのですが、そうは作者が卸しません。
「理想の女性」をパートナーに迎えたはずの光源氏でしたが、その後も(紫が一番とは言え)ガールハントがやむことはなく、ついには春宮の側室・朧月夜(おぼろづきよ)の君にまで手を出してしまい、彼女が政敵の妹だったからさぁ大変。
「これは朝廷に対する謀叛ぞ!」
光源氏は一族に累が及ばぬよう、率先して都を離れ、須磨(現:兵庫県神戸市)の地に謹慎。