天下分け目の攻防戦!陥落する城から脱出した少女の回想記「おあむ物語」 (5/7ページ)
明日は落城…差し伸べられた救いの矢文
さて、そんな調子で徹底抗戦していた大垣城でしたが、調略によって城将が次々と寝返り、また誘いに乗らなかった者たちは一網打尽に謀殺された結果、総大将の福原長尭を除いて指揮官がほとんどいなくなってしまいました。
日に日に銃撃も激しくなり、弾丸が天守閣にまで届くようになると、おあんの弟が被弾し、そのまま死んでしまいます。
この分なら、明日にはいよいよ落城だ……覚悟を決めたある夜のこと、おあん達の元へ父・去暦がやって来ました。
「よく聞け……今夜、城より落ちる。他言は無用ぞ」
話によると、去暦が守備する城門へ一通の矢文が射込まれ、そこにはこう書かれていました。

三成のライバル・徳川家康。ここ一番でコネが活きて、命拾いのチャンスが得られた。
去暦事は。家康様御手ならひの御師匠申された。わけのあるものじやほどに。城をのがれたくは。御たすけ有べし。何方へなりとも。おち候へ。路次のわづらひも。候まじ。
【意訳】
あなた(去暦)はかつて、家康様に手習いを教えられたとのことで、家康様も殺すに忍びないと仰せである。もし城を脱出するなら、身柄の安全を保障しますから、どこへでも落ち延びて下さい。
矢文の主は田中兵部(たなか ひょうぶ。吉政)とのことで、この時は近江国の佐和山城(現:滋賀県彦根市)を攻めていた筈ですが、ともあれ、おあんの記憶ではそうだとの事です。