歌舞伎「紅葉狩り」で鬼女を倒した平維茂を祀る長野県上田市の将軍塚 (5/6ページ)

心に残る家族葬

本当に「鬼女」らしく、自身の知恵や得意技を活かして子どもたちを啓蒙したり、妖術を用いて病気治癒などの「いいこと」をして、人々の警戒感を解き、安心・油断させてみたり、逆に疎ましい人間を死なせようとしたり、人々の財産を狙ったり、果ては生き血をすすり、肉を食らったりする、妖怪変化のように口から火を吹いたり、雨嵐を巻き起こしたりしたのだろうか。

紅葉が両親によって「〇〇神社」「〇〇観音」「〇〇地蔵」に祈った御利益ではなく、それらの神仏に「見切り」をつけ、「第六天魔王波旬」に呪いや怨念のように祈り、「言霊」ではないが、「先祖の仇を打ちたい」「一旗あげたい」野望を抱いていたであろう両親から産み出され、育てられた人物で、なおかつ天性の「女ボス」だったことは間違いないだろうが、果たして「普通の人間とは到底思えない」ほどの残虐非道なことを実際にやったのだろうか。時の天皇の耳に入り、紅葉一派は「討伐」しなければならないほどの強力な存在だったことは言うまでもないが、果たして実在の人物だったのか。それとも維茂が勇猛果敢だったのみならず、仏への信仰も篤い、「偉大な人物だった」ことを強調するために、必要以上に悪く語られているのか…今となっては、その「事実」「真実」を知る術はないが、今日もなお「生き続ける」紅葉伝説における紅葉の「悪辣さ」「ふてぶてしさ」は、「正義の味方」の源維茂と同様、またはそれ以上に、我々の心を妙に惹きつける。自分の人生においては、絶対関わりたくない人物ではあるものの、何故か忘れられない。紅葉のたたえる、独特な悪の魅力を否定することは、誰にもできない。

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