愉快だけど、キレると怖い?北条一族の魔手から家名を守り抜いた鎌倉武士・三浦家村【前編】 (5/6ページ)
「おうみんな。浜へ出て遠笠懸(とおかさがけ。遠距離射的)でもしようぜ」
「いいねぇ……ウィック」
上野十郎(こうずけ じゅうろう)がそう言うと、小山一族ご一行様はノロノロと席を立ちます。すると、若宮大路を挟んで対面に一匹の犬がいました。
「よぅし、景気づけにあれを射止めようぜ」
言うが早いか十郎は弓を引き絞って矢を射放ちます。犬を見たらとりあえず射ようとする発想がアレ過ぎますが、とかく鎌倉武士たちはこんなノリで生きていたようです。
しかし酔っ払っていたせいか手元が狂い、矢が遊郭の中へ飛んで行ってしまいます。そして三浦兄弟がドンチャカしているところへ突き立ちました。
「あ、いけね」
十郎は雑色(ぞうしき。召使い)に命じて矢を回収に向かわせますが、そこにいたのは満面を憤怒に染めた家村。矢を返す訳がありません。何なら手さえ出ていたでしょう。
「てめぇ、我らを三浦兄弟と知っての狼藉か!」
「いやぁごめんごめん。悪気はなかったんだ……つ(言)ってンだろ!」
「ごめんで済んだら侍所は要らんのじゃ!」
「ほうけ、だったらどうしてくれようかい」
「表ぇ出ろ我れぁ!」
「上等じゃ!おぅ、すぐに頭(アタマ=人数)集めろぃ!」
さぁ始まりました三浦と小山、両一族のにらみ合い。