薬剤耐性と急性中耳炎 医師と患者のコミュニケーションが重要 (4/6ページ)
しかし、「鼓膜が赤いから抗菌薬、急性中耳炎だから抗菌薬、細菌感染症だから抗菌薬、重症そうだから抗菌薬」という考え方が依然として残っていることがあります。新しい抗菌薬がどんどん開発されていた1990年代までと異なり、新しい抗菌薬の開発が難しくなる一方で、外来で診る感染症で耐性菌が問題となっている今、本来であれば必要でない患者さんに「念のため」と抗菌薬を処方することが、AMRを拡大させ、結果として人々の健康リスクを増大させることにつながるという認識を、医師へも広めていくことが急務であると永田先生は考えています。
また、患者側から抗菌薬の処方を希望することがあります。特に、患者である子どもの両親が抗菌薬の処方を要望するというケースがしばしばあります。「中耳炎だから抗菌薬、早く治したいから抗菌薬、という風に認識してまっている患者さんが一部います」と永田先生は言います。
*小児急性中耳炎診療ガイドライン2024年版 (日本耳科学会・日本小児耳鼻咽喉科学会・日本耳鼻咽喉科感染症・エアロゾル学会)、JAID/JSC 感染症治療ガイド 2023(日本感染症学会・日本化学療法学会)
急性中耳炎のワクチンとAMR対策
急性中耳炎の原因となる細菌も、AMRと無関係ではありません。永田先生は「中耳炎の原因となる細菌で最も多い肺炎球菌の薬剤耐性化が進行し、2000年代までは重症化し入院/手術が必要となったり、鼓膜切開や繰り返し罹患(りかん)したりする患者さんをよく診ました。しかし、2011年に肺炎球菌の感染を予防するワクチンが定期接種化されてからは、そのようなケースがかなり減りました」と振り返ります。ワクチンは約100種類ある肺炎球菌の中でも重症化しやすい種類に対応できるように作られています。ワクチンで予防できる種類の肺炎球菌が減少しても、それ以外の種類の肺炎球菌による感染症は減りません。そのため永田先生は「ワクチンが普及したとはいえ、肺炎球菌の薬剤耐性菌によるリスクは依然として存在します。不要な症例には抗菌薬は使わないこと、使用する際も適切な種類、量、期間を守って投与することが重要であることは変わりません」と訴えています。
さらに、子育てをめぐる環境が変化したことも急性中耳炎に罹患するリスクの一因になっています。