大河「べらぼう」蔦屋重三郎と瀬川を生涯結ぶ2冊の本 『心中天網島』『青楼美人』の実際の内容とは?【前編】 (4/7ページ)
離縁され家に連れて帰り、絶望した治兵衛は小春と心中するという内容です。
なぜ蔦重はこの本を選んだのでしょう。小春の身請け話に嫉妬した治兵衛に自分を重ねたのか、この話のように「最後はお前と心中するつもりでいる」という覚悟のほどを伝えたかったのか。いずれにしても、瀬川はこの本に託されたメッセージにすぐ気が付いたことでしょう。
蔦重が瀬川に贈った名前はいつも夢見ていた「しお」偽造した通行手形に書いた名前は「女 しお」。幼い頃に蔦重からもらいずっと大切にしていた赤本『塩売文太物語』の主人公で、塩売の娘の名前です。この本は、しおがいろいろな体験をするものの最後は恋人と結ばれる内容で、縁起がいいために祝儀物として歓迎されていたとも。
「いつか、惚れた蔦重と添い遂げる夢が叶う」と希望を持てるからか、何度も何度も瀬川が読み返した本です。そんな本の主人公「しお」の名前を蔦重が、「一緒に逃げよう」という通行手形の偽名に使うという、心憎い演出でした。