『べらぼう』胸が詰まる“桜”の演出…田沼意知と誰袖の幸せな桜、悲劇を招いた佐野の枯れ桜【前編】 (5/8ページ)
源内の意志を引き継ぐ覚悟、誰袖の約束を守る覚悟など、意知の胸の内を明かされ「私に何かできることがあればお申し付けください…」と答える蔦重。
それに対して笑みを浮かべた意知が言ったのが、冒頭の「よろしく頼む。蔦屋重三郎」です。
二人の心が通い合い、信頼という絆が芽生えた瞬間。蔦重をフルネームで呼ぶところもよかったですね。
このセリフ。瀬川が“五代目瀬川を継ぐ決意”を伝え、「吉原を何とかしたいと思ってんのはあんただけじゃない。だから礼にゃ及ばねえ。けど……任せたぜ、蔦の重三。」を思い出した人は少なくなかったようですね。
部下に「頼んだぞ」と言いながら、失敗したら知らん顔して相手のせいにして何の責任も取らない人間たちとは大違い。
意知と瀬川の「頼んだ」は、相手におんぶに抱っこで任せるのではなく、「自分が責任を背負う」と腹を決めた人間のすがすがしさと覚悟が伝わる言葉だと思います。
想いが通じた満開の“桜”に花をつけぬ“桜”が重なる意知が胸のうちを明かし蔦重が思わず涙を浮かべた頃。
誰袖は意知からの手紙を読みます。恐る恐る文を広げて読み進む誰袖の手は、「別れの言葉が書き連ねてあるのだろう」という悪い予感に震えているようでした。
けれども書いてあったのは「そなたに会えないのは辛い。そこでとりあえず、土山が身請けしたと体裁にして吉原からだす。それでもよいと思ってくれるならば申し出を受けてもらいたい」という意知の求愛。
安堵と喜びで涙を流しながら、ちょっと震える声で「身請けの話はもう無くなったと思いんしてな」と微笑みながら言う誰袖。本当にそう思っていたんだなと感じて、胸が詰まるようでした。
屋敷の机に向かい「今年の春はそなたと花の下で月見をしたい」と文を書きながら、ふと顔を上げて微笑んだ意知。