『べらぼう』ブチギレる蔦重、暴走する定信…実は”表裏一体”な二人が守ろうとしているものは?【前編】 (2/8ページ)
立場は違えども苦しむ二人
前回、蔦重は薄暗い自室で春町の遺書を読み返し涙していました。「また大切な人を守れなかった」という忸怩たる思いで、胸が潰れそうだったでしょう。
定信も一人部屋で春町の『鸚鵡返文武二道』を手に取り読み返していました。一度激怒して破ったのに、本は綴じ直してありました。大好きだった“推し”を死に追い込んでしまった後悔から、自分で丁寧に修復したのでしょう。
「戯ければ、腹を切られねばならぬ世とは、一体誰を幸せにするのか。」と春町の自死を伝えた、小島松平家の主君・松平信義(林家正蔵)の言葉が脳裏に蘇っていたことと思います。
蔦重の後悔と定信の後悔。立場は違えども苦しみは同じ。けれども、大きく異なるのは蔦重の隣には、妻・てい(橋本愛)が寄り添っていたこと。
本の出版を「自分も止めなかった」と言い、自分も同罪であると伝えます。だから、あなただけの責任ではない…と。
それに対し、定信の部屋はがらんと広く心配してくれる家臣も友人も家族もいない。独りの後ろ姿が、孤独を鮮やかに浮き彫りにしていて、切ないものがありました。