Gold受賞企業3社が語る「はたらく人ファースト」の実践〜HR領域のAI活用・エンゲージメント・働き方改革の最前線 (7/10ページ)
全社員に対して管理会計を開示し、予算管理も担わせることで、従業員一人ひとりが経営視点を持つ組織へと転換しました。また、マルチスキル化を推進し、自ら判断し行動できる人材の育成を重視。指示待ちではなく、現場が主体的に動く組織づくりを進めています。
さらに、福祉業界のライフデザインでは、慢性的な人材不足という課題に対し、採用手法の見直しだけでなく、マーケティングやDXの導入を積極的に推進。FAX文化の見直しなど、業界に根強く残る慣習にも踏み込み、業務効率の改善とはたらきやすい環境づくりを同時に進めています。単なる自社改善にとどまらず、業界全体のスタンダードを変える取り組みへと発展している点が特徴です。
こうした各社の実践に共通しているのは、「はたらき方を変えること」を目的にするのではなく、「はたらく人の状態を起点」に設計している点です。
常見氏は、企業主導で効率化や制度改革を進めるあまり、従業員に対して一方的に「もっと、はたらくことができる状態」を求めるだけでは、本質的な改革とは言えないといいます。重要なのは、従業員を“労働力”としてではなく、一人の生活者として捉えることです。
育児や介護、健康、さらには自身のキャリアや人生設計など、仕事の外側にある現実とどう向き合うのか。また、「もっとはたらきたい」という意思を持つ人と、「無理なくはたらきたい」という人が共存する中で、どのようにバランスを取るのか。実際に、厳しい環境であっても成長機会を求めてあえて挑戦したいと考える人材も一定数存在する一方で、過度な長時間労働は心身に大きな負担を与える側面もあります。
だからこそ、企業には一律の正解を押し付けるのではなく、“ホンネ”に向き合いながら最適な落としどころを設計することが求められます。制度や仕組みだけでなく、企業としてどのようなスタンスを取るのか。それを曖昧にせず、言語化し続けることが、これからの組織運営において重要であると述べました。