「第155回芥川賞」候補作を全部読んでガチで受賞予想してみた (6/7ページ)
どれだけの選考委員の琴線に触れるかが受賞を左右するでしょう。
「コンビニ人間」村田沙耶香(文學界6月号)
あらすじ
「普通」というものがわからずに生きてきた「わたし」。大学1年生の頃からおなじコンビニで就職もせずに18年間働き続けている。そして処女。彼女は自身の人生がコンビニ店員になる以前と以後ではっきりわかれていると自覚しており、曰く「コンビニ店員として生まれる前のことは、どこかおぼろげで、鮮明には思いだせない。」。
そこへ同世代の甲斐性なしの童貞・白羽がわたしのコンビニにスタッフとして入ってくる。しかし白羽は問題行為のためすぐに店をクビになる。が、わたしはひょんなことから白羽と同棲することになる。それをきっかけに、周囲の「わたし」をみる目が変化していき、画一化された生活が乱れていく。
読みどころ
出す作品が毎回「イカれてる」「クレイジー」と文芸界隈で評価を受ける村田沙耶香。この「コンビニ人間」は、コンビニの画一的なサービスをマニュアルとし、「人間らしさ」に擬態し、それにすがりついて生きて行く様が描かれています。人間らしい振る舞い(しかし完全に人間とはいえない)をするロボットから感じられる不気味さを、「不気味の谷」と呼ぶのですが、今作はまさにそれを語りのなかにも存分に取り入れています。
例えば本文から引用すると、
どちらかというと白羽さんが性犯罪者寸前の人間だと思っていたので、迷惑をかけられたアルバイト女性や女性客のことも考えずに、自分の苦しみの比喩として気軽に強姦と言う言葉を使う白羽さんを、被害者意識は強いのに、自分が加害者かもしれないとは考えない思考回路なんだなあ、と思って眺めた。