「第155回芥川賞」候補作を全部読んでガチで受賞予想してみた (7/7ページ)

KAI-YOU.net

「コンビニ人間」(『文學界6月号』掲載)より引用

といったような、「人間らしい感覚」をなんとか寄せ集め、自分の感情として使うのではなく、「正しい思考」というパーツとしてつなぎ合わせ、機械的に吐き出された文章がこの作品では徹底されています。

選考でのポイント
今回の大本命。エキセントリックな人間を描きながらも物語と主題を破綻なくまとめ上げた、他の追随を許さない圧倒的な完成度を誇ります。

受賞作を予想してみた
上記を踏まえ、独断と偏見による受賞予想をしてみます。まず、5作を芥川賞の受賞候補という観点から◯×△で評価してみます。

短冊流し:×
あひる:△
美しい距離:×
ジニのパズル:◯
コンビニ人間:◯

おそらく、選考では「ジニのパズル」と「コンビニ人間」の一騎打ちになると思われます。新人作家の勢いと、キャリアがある作家の安定感といった真逆の戦いがどう転ぶのか、とてもたのしみです。

ぼく個人の予測としては「コンビニ人間」の単独受賞。「ジニのパズル」はどうしても粗さが目立ち、芥川賞作品として推す側もちょっと慎重になる気がします。


よく「芥川賞受賞作品のおもしろさがわからない」ということを見たり聞いたりしますが、物語のあらすじや、完成度だけでは単純に評価できないのが(特に純文学といわれる)小説の醍醐味です。この記事の最初の方にも少し書きましたが、小説と名付けられなければ小説には見えない文章も受け入れてくれるのが「純文学」です。

時には文法をも食い破っていく荒々しい作品もあり、そこには「常識的な物語観・文章観」では絶対に思ったり考えたりすることができないものがたくさんあります。それゆえの「わかりにくさ」はやはりあるのですが、読者を果てしなく遠くの世界へ連れて行ってくれる力強さがあると筆者は信じています。これらの小説は、「読書する」という行為こそがドラマティックな物語そのものなのです。

まずは、有名な文学賞の予想して、当たりハズレ関係なく、皆さんも「お祭り」に便乗して騒いでみてはどうでしょう? これもまた読書の楽しい方のひとつだと思います。

「「第155回芥川賞」候補作を全部読んでガチで受賞予想してみた」のページです。デイリーニュースオンラインは、村田沙耶香山崎ナオコーラ田中慎弥純文学芥川賞カルチャーなどの最新ニュースを毎日配信しています。
ページの先頭へ戻る