AVが消える![後編] フリーライター・中村淳彦 (4/5ページ)
お前が腹をくくってくれるなら、そこまでやるって」
なんと1年を費やして口説かれ、AV出演を決断する。歌手になるためのステップと、本気で思っていたという。
「男優と絡みのあるAVは遠い存在で、ずっと断っていた。事務所の人たちに『今、時代は変わった。あなたは職業差別をしている。AV女優を見下している』と言われた。差別とかそういう言葉を使われて、確かに自分はAV女優を差別しているかもと思い、後ろめたかった。でも、やっぱり遠い存在。理解できないからこわかった。だからAVには出たくなかった。事務所で十数人の男性に囲まれて説得を受け、だんだん音楽のためには必要なこと、1%でも可能性があるならば信じようと思うようになった。今思えば、洗脳です」
AV出演に頷くと、急に動き出した。男性経験がほとんどなかった彼女は“ほぼ処女”と売り出された。
「撮影は苦痛でしょうがなかったけど、現場には私の気持ちを共有してくれる人は誰もいなくて、みんな笑っていた。撮り直しは嫌だし、取り繕わなければ先に進まない。ノリノリな雰囲気を出したけど、本当に苦痛だった」
女優が嫌がるから監督の裁量で撮影中止、みたいなことはありえない。撮影の段階でメーカーはプロダクションに出演料を支払い、スタッフなどの撮影経費が発生する。撮影に突入すれば、基本的には女優がどんな状態だろうと、乗り切るしかない。
「精神的にも身体的にも、ドン底まで落ちました。自分がそこまで性行為をやらされると思っていなかったし、本当にツラかった。想像を超えていました」
最終的に2本に出演、出演料はたった5万円だけだったという。
「悪質なスカウトや事務所は、騙すことをやめて欲しいって気持ちだけ。自分はピュアで繊細な性格で、AV強要が原因で自殺する子もいるって聞いて、ドーンときた。騙され続けている女の子がたくさんいると思うし、それをなんとかしたい。デビューできるよ、音楽できるよって言われたら、本気にしちゃう女の子ってたくさんいる。100%信じちゃう子はいる。でも、嘘と分かった場合、あまりにもショックで自殺しちゃうのは理解できる」
騙されて出演した上に、労働の対価が支払われないという被害に遭ったことが、告発を決意させている。