【小説】国芳になる日まで 〜吉原花魁と歌川国芳の恋〜第9話 (1/6ページ)

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【小説】国芳になる日まで 〜吉原花魁と歌川国芳の恋〜第9話

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【小説】国芳になる日まで 〜吉原花魁と歌川国芳の恋〜第8話

■文政七年 夏と、秋(1)

幾条の花火が、江戸の紫紺の空を燦爛と綾取っては散り、散ってはまた綾取る。

銀朱、丹、藤黄、鬱金、それに雲母(きら)。

花火の色を浮世絵の色材に例えれば、そんなところだ。

貞房「東都両国夕涼之図」国立国会図書館蔵

貞房「東都両国夕涼之図」国立国会図書館蔵

どおんと音がするたびに、花火は隅田川の河川敷や両国橋に押しかけた多くの見物人の心に鮮烈な金紗の絵の具を幾度も幾度も塗りつけ、そのくせ散りぎわははらはらと、余りにも呆気なく人々を追い越してゆく。

だから儚い夏の夜の夢の中に置き去りにされた男女は、胸にぼんやり寂寥を抱えたまま途方に暮れてしまう。

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