中森明夫と宮﨑勤の〝罪と罰〟(ロマン優光) (5/8ページ)

ブッチNEWS

本当に不快でしかなく、自分たちは「おたく」ではないという主張を繰り返したものの、世間に勝てるはずもなく、ネガティブなイメージだった「おたく」という言葉を捉え直そうというマニア内の動きもあって、自分が「おたく」であるという名乗りを便宜上しぶしぶ受け入れるようになるのはのちの話となります。

 受験が終わり東京の大学に進学し、ライブハウス通いにいそしむ生活を続けていた私は一冊の本に出会います。そして、衝撃の事実を知ることになります。
「おたくって言葉を作ったのは、あのダサい奴か! だいたいあいつ自体がアイドルおたくのくせに!」
 そう、その本の名は別冊宝島『おたくの本』、そこで私は中森明夫自身の手によって、その事実を知ったのです。 さらに年月が過ぎ、おっさんになった頃、ついに 『「おたく」の研究』の全文を読むことになります。

 今の視点であれを読むと、リアルタイムであれを読んでしまった人が受けたであろう衝撃や不快感とはまた違う、妙な感慨を伴った感情が湧いてくることになります。あの文章を書いた頃には彼の容姿を読者は知らなかったでしょう。しかし、今は違います。
 私の周囲にいる人で彼の画像を見た者の多くが口にするのは「あんなことを書いてるのに、自分が単なるキモオタじゃないですか。」という言葉です。現在の画像は「こんなおっさんオタクいる!」みたいな感じでしかないし、若い頃の画像もネットで見ることが可能なんですが、服こそ高そうですが、すごくオタクっぽいのです。アイドル評論家になってからのち、チャイドルという言葉を作ってローティーンのアイドルを推しだして以降はアイドルオタクのイメージもついています。そういう情報が入った後にあの文章を読んでしまうと、「モテるお洒落なサブカルがオタクをバカにしている。」という印象ではなく、「キモいドルオタがコミケで二次オタを見たら同族嫌悪のあまりキレてしまって二次オタを攻撃しだした。」ような印象になってしまうのです。

『東京トンガリキッズ』や『オシャレ泥棒』は音楽やファッションなど当時の最先端の風俗を取り入れた小説です。しかし、ご本人がそういったものに精通している感じは全くないのです。

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