どんな美女にもまさる姫君!「源氏物語」ヒロインで極度のコミュ障・末摘花の恋愛エピソード【完】 (5/7ページ)
しっとりとすべやかな指先でわたくしの(唯一の自慢である)髪をなぞり、広く温かな胸に、わたくしを招き入れて下さった……何もかもが、わたくしには分不相応に素敵だった。
もし叶わぬまでも、こんな望みが許されるなら、あの声で囁いて欲しい……「末摘花の君」と。あの方がわたくしに贈って下さった、とても美しい名前。もう一度聞けるなら、今ここで死んでもいい。
「……末摘花の姫君よ」
すると御簾の向こうから、聞こえる筈のない声がしました。
「……深き蓬のもとの心を」姫君の一途さに感激する光源氏「……あら……わたくし、もう死んだのね……?」
末摘花の姫君は、目の前の光景をそう理解しました。それもその筈、姫君の前に、来る筈もない光源氏が立っていたのですから。
「これは幻……でも、嬉しい。我が愛しき背の君の姿を、こうして映しだして下さったのですもの……神様仏様……本当にありがとう存じます……」
「あ、あの……」
一人合点している末摘花の姫君に、光源氏は少し困惑しています。
(……まさか、本当にこんな恐ろしい荒れ屋敷に、独りぼっちで私を待ち続けていたとは……)
本当はたまたま近くを通りがかっただけなのですが「あの不器用だけど一途な姫君なら、今も私を待ち続けているかも知れない」と、確かめに入ってみたのでした。