写経はどうして生まれたのか。写経によってどんな効果が得られるか。 (1/3ページ)

心に残る家族葬

写経はどうして生まれたのか。写経によってどんな効果が得られるか。

仏教経典の言葉を書写する写経。最近はヒーリング・エクササイズのひとつとして定着しているようだ。お香の焚かれた仏間で心を浄める写経は、癒やしと気づきのひとときを与えてくれる。写経は従来の習字や読書とは異なる。経典は仏の説く教えと、言葉自体に秘められた神秘との対話である。

■写経の始まり 呪術としての仏教

日本における写経は天武天皇(?〜686)が書生を集めて「一切経」を書写したという「日本書紀」の記述が最古の記録とされている。平清盛(1118〜1181)の平家一門が、写経をした「法華経」を厳島神社に奉納した「平家納経」は特に有名である。写経の目的は病気平癒、戦乱の平定など様々で、経典の呪術的な力にすがって人智を超えた困難、災厄を乗り越えたいとする思いが伝わる。保元の乱(1156)で敗れ、讃岐に配流された崇徳上皇(1119~1164)は血を筆に染めて大乗経五部を血写したという。まさに呪術そのものである。元々仏教が伝来して為政者が飛びついたのは呪術的な力を期待してのものだった。無名の僧であった空海(774〜835 )が朝廷に重用されたのも空海が全伝を継承した密教の呪術としての魅力故であった。仏教には素朴な日本の神祇には無い複雑な思想体系があった。日本人はその深遠な教えの奥に神秘を見たのだ。

■お経の意味と霊験

お経には呪術的、神秘的な力が宿っているとされている。お経にまつわる霊験譚は多い。「法華経」「般若心経」「延命十句観音経」などが有名だが、こうしたお経は唱えるどころか聞くだけでも災厄を防ぎ病気を治癒するという。そのような話を聞くと経典とは呪文の集まりなのかと思ってしまうが、そのようなことは全くない。真言や陀羅尼の類は正しく呪文で意味はわからないが、日本人に最も知られているであろう「般若心経」は、一切の存在は「無」であると説く哲学書に近い。これを写経して功徳を得られるというなら、知覚していない物質の非実在性を説くジョージ・バークリー(1685〜1753)の著書や、量子力学の本などでもいいことになる。また「観無量寿経」は極楽往生するための瞑想テクニックが書かれている、いわばハウツー本である。

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