『べらぼう』恋心を秘めた歌麿と決別、初めての子との別れ…どん底に落とされた蔦重の悲劇【後編】 (5/8ページ)

Japaaan

歌麿もそれらしいことは何ひとつ言ってませんでしたし。

「俺に好きな女ができるのがそんなに嬉しいのか」と聞く歌麿に「あたり前だろ。おきよさんと一緒になったときのお前、そりゃ楽しそうでよ。またそうなってくれねえかと思っていた」

確かに蔦重は、鈍感は鈍感なのですが、これは“兄として”妻を失い苦しんでいた弟に新しいパートナーができることは喜ぶのは当たり前でしょう。「誰だよ」と聞かれても、「言えねえな。俺が好きなだけで向こうには脈はなさそうだし」と答える歌麿。

言ったところで、蔦重が困るだけで自分の想いが成就するわけでもありません。
かえって、蔦重に気を遣わせて、今までの“兄弟として遠慮なく何でも話ができる間柄”まで壊れてしまうでしょう。自分でも持て余していた“恋心”に、自ら決別をつけた瞬間だったと思います。

「うまくいったら教えてくれ」という蔦重に「俺、蔦重にはいわねえよ」と返事をする歌麿に、「好きな女の話」ではない不穏なニュアンスを感じ、はじめて蔦重の顔が不審そうな表情に変わります。

「は?」と顔をしかめる彼に「俺、蔦重とはもう組まない」と最後通告をする歌麿。

その決別の理由を、自分の名前と蔦屋の印の配置のことや、西村屋の跡取りに「そうきたか!」と思わせるような面白い提案をされたことなどをぶつけましたが。自分の想いをはっきりと告げなかったのは、歌麿なりの「打ち明けたところでどうにもならない」「蔦重を困らせるだけ」という思いやりもあったでしょう。

懸命に引き留め「なんでもする」という蔦重に「じゃあ俺をあの店の跡取りにしてくれ。あの店を俺にくれ。」と、本当は店など欲しいわけでもないのに無理難題をふっかけます。

それは無理だという蔦重に、「蔦重はいつもそうなんだ。お前のためお前のためって言いながら、俺の欲しいものなんて何一つくんねぇんだ

歌麿が一番欲しいのは、蔦重にとって「唯一無二の存在」「一番の存在」であることなのに。ていと結婚し子供ができ、絶対にそうはなれない歌麿の最後のわがままでした。

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