暇だからゾウ使いの免許を取りにチェンマイへ行ってみた (1/7ページ)
「チェンマイには、象使いの免許が取れるキャンプがある」
そんなウワサを耳にしたのはタイに発つ一週間前だった。
せっかくタイに行くんだから象には乗っておきたいな~などとぼんやり考えていた私もこれには驚いた。象使い。なんと良い響きなのだろうか。自由自在に象を操る象使いになれたら、きっと今後の人生も自信を持って生きていける気がする。
履歴書の「免許・資格」欄に「英検3級」と書くよりは「象使い」と書いてある方がインパクトがあるし面接官との会話も弾むこと間違いなしだ。
インターネットで調べたら象使い免許の取れるキャンプはチェンマイにたくさんあるようで、とりあえず現地の旅行代理店に行けば何とかなるらしい。
今回の旅の目標を「象使いの免許を手に入れる」に定め、勇んでタイに降り立った私はまずはバンコクで観光がてら情報を集めることにした。
私がその時滞在していたのは「カオサン」と呼ばれる安宿街で、世界各国から集まったバックパッカーたちで賑わっていた。カオサンからほど近いところに「ワットポー」と呼ばれる有名な寺院がある。徒歩10~15分で辿り着くというので散歩がてら行ってみようかと外に出ると、暑い。何しろ毎日摂氏30度を当たり前のように超えている。夏ではない。10月のことだ。ちなみにタイは冬でも25度を下回らない。
「お姉さん、どこいくの?」
暑さに顔をしかめる私にそう語り掛けてきたのはトゥクトゥクの運転手だった。トゥクトゥクというのは観光者向けの三輪タクシーのことで、自動車のタクシーよりも割高な運賃を請求してくることが多い。
しかし、前日に移動ばかりして足が疲れていた私は、暑い中を彷徨い歩くよりもぼったくられるほうを選んだ。「ワットポーに行きたいです」と運転手に近寄ると、「ワットポーに行く前に旅行代理店に連れてってやるよ」という不可解な返事がかえってくる。