一聴の価値あり。音響が素晴らしい映画10選 (3/10ページ)
■『M』 (1931)

幼女殺人のシーンは映らないけれど、それを想像させる怖さ
フリッツ・ラング監督のトーキー映画『M』。映画の2/3をトーキー、1/3をサイレンスにしており、会話が全く交わされないシーケンスは、そのコントラストもあって非常に力強く描かれています。
フリッツ・ラングはボイスオーバー・ナレーションやインナーカットダイアログといった現在の当たり前に使用されている映画テクニックのパイオニアで、本作が公開された1931年当時としては、とても斬新な手法を幾つも取り入れた作品でした。
中でも特に有名なのが、BGMを使わずに、エドヴァルド・グリーグの劇音楽『ペール・ギュント』の一節「山の魔王の宮殿にて」の口笛を殺人犯に吹かせたことでしょう。
(殺人犯役のピーター・ロアは口笛を吹けなかったので、ラングの妻と脚本のテア・フォン・ハルボウが担当)この口笛は殺人犯の特定の鍵となるだけでなく、アクションやサスペンスの喚起にもなっているのです。
サウンド映画が初めて登場してから4年目に公開された本作は、ポール・ファルケンバーグとアドルフ・ジャンセンによって綿密に計算された編集のおかげで、「映画は視覚を楽しむだけのものではない」ということを世界に知らしめることに成功しました。