名古屋妊婦切り裂き殺人事件 前編 (4/5ページ)
殺害に使ったと見られる電気コードや手を縛ったヒモも部屋にもともとあったものだし、犯行に使われた刃物も残されていなかった。部屋を荒らされた形跡もなく、盗られたのはMさんの財布のみ。指紋もきれいに拭き取られていた。
「残忍さから見ると衝動的な感じもしますが、証拠を一切残さないところから考えると計画的な犯行とも取れる……複雑な事件です」
北芝氏は、こう言って首を傾げた。
警察は当初から、これらの目撃情報を頼りに捜査を進めた。この中に犯人はいたのだろうか。
窃盗犯がよく使うナカムラという姓
「ノビの手口ですね」
北芝氏が言う「ノビ」とは、忍び込みの略。空き巣狙いの窃盗犯を指す警察の隠語だ。
「普通は先にチャイムを鳴らすでしょ? ドアをカチャカチャやってからピンポンは泥棒の手口ですね。鍵が閉まっていたら、そのまま立ち去るんだけど、一応、チャイムを押さないと隣近所に怪しまれますからね。出てきた住人には適当な名前を言って家を探しているというのが常套手段」(北芝氏=以下同)
そういった場合、ノビはナカムラやタカハシといった名字をよく使うのだという。サトウやスズキだとわざとらしいし、変わった名字だと逆に目立ってしまうからだ。
「飛び出して来た男も、その類でしょうね。目撃時刻も同じだから同一人物の可能性もあります。50m先を左に曲ったとありますが、だいたいの窃盗犯はグループですから、近くの大きな交差点で車を停めて待っていることが多いんです」
そうすると、Mさんが見送りに出た隙に忍び込んだ空き巣による"居直り強盗"説が有力と、警察は見たのだろうか。
だが、顔を見られたという理由だけで、腹を切り裂き、胎児を取り出すことまでするものだろうか?
「時間的に無理でしょうね。飛び出して来たのを目撃されたのは15時10分頃でしょ? あれだけの犯行は、わずか数分でできる所業じゃないですよ」
確かに、あとになって、この飛び出してきた男は捜査線上から外れている。
「そもそも、居直り強盗みたいな、衝動的な犯行じゃないと思いますね。明らかに計画的犯行です」
その根拠を、北芝氏は次のように言う。