【小説】国芳になる日まで 〜吉原花魁と歌川国芳の恋〜第28話 (12/13ページ)
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しかも、比較すると二人の筆はよく似ていた。英泉は後年、自著の「无名翁随筆(むめいおうずいひつ)」に「国貞が自分の画風を真似した」と書き記したが、どちらが先で、どちらが真似という本当のところは分からない。
見方を変えれば相性が良く、しかもこの二人の合作となればかならず売れるので、時には有力版元から国貞との共作の企画まで持ちかけられた。断れない英泉は辟易している様子で、
「あいつとの共作は、やり辛くて敵わねえ」
「何でです」
二人が合わないのは話を聞くだけで分かる気がしたが、国芳は一応訊いた。
「あーしらの絵はよく似てると言われるが、ちっとも似てねえ。あいつは、世間の闇を知らねえ。ずっと豊国の引いた光の後をまっつぐ歩いてきたんだろう。夢とか希望とか嘘っぱちばかり描きやがってよ。そんないい子ちゃんと、あーしみてえなひねくれ者の筆とが似るわきゃねえ」
「マア確かに、国貞の兄さんは優等生ですからねエ」
国芳は、腕を組んで頷いた。
「でも、悪く言うなアやめてくだせえ。あの人を悪く言っていいのア、わっちだけでしてね」
「ふうん」、
英泉はさも面白くなさそうにあごで国芳を見た。
「何だかんだあーた、野郎の肩を持つてえのかい」
「そりゃあマア、狐だろうが狸だろうが兄弟子ア兄弟子ですから。それに」、
国芳の切れ長の目が、きらりと光った。
「世間様に夢とか希望を与えるなア、歌川流の十八番でしてね」。
「ふん。