【小説】ひと夏の恋、永遠の恋。/恋愛部長 (3/16ページ)

ハウコレ



和紗は、何度も繰り返されるドタキャンに、ほとほとうんざりしていた。亮平はまるで、カーニバルの熱狂に浮かされている道化師のようだ。

あれほど冷静沈着で、歳より落ち着いて見えた亮平が。和紗の好きだった、静謐な湖のようだった亮平が。いまでは、世俗に暴かれ、狂乱し、食い散らかされてしまった。

和紗は、虚しさを覚えるとともに、自分の中に沸き起こる亮平への嫌悪感に戸惑っていた。まだ、亮平のことは、好きだ。誰よりも好きだと思う。

女性たちに囲まれ、なれなれしく触れられているのかと思うと、虫唾が走るほど嫌だと思う。それは、まだ亮平を愛している証拠だと思った。

亮平と離れようと決めたとき、和紗は社会人3年目になっていた。

何度も何度も別れ話を切り出そうとしたけれど、実際に亮平と顔を合わせ、昔から変わらない人懐こい笑顔を向けられると、どうしても言い出すことができなかった。

合コンは相変わらず止むことはなかったし、時差をものともせずやり取りする苛烈な職場で、忙しさはひどくなる一方だった。化粧品などのプロダクトデザインを手掛ける小さなデザイン事務所に入社した和紗と亮平との間には、もはや埋めようのない溝が広がっていた。

そんな時に、「パリにデザインを学びに行かないか」と雇い主であるデザイナーの師匠に話を持ちかけられたのだった。

パリは、デザイナーにとっては憧れの地だ。迷うことなく、ふたつ返事で行くと答えた。亮平に相談はしなかった。そして、3か月後には住居を畳んで、パリに飛んでいた。

亮平は、出国の見送りには結局、遅刻してたどり着けず、空港から車で約15分ほどの地点から、最後のメッセージを飛ばしてきた。

「ごめん、もう間に合わないからここから。あっち行っても元気で。着いたらまた連絡して」

その言葉を、空港のゲートをくぐりながらケータイの画面で確認した。

さすがに心細くて、最後に亮平の顔を見たかった和紗は、そのメッセージに落胆して、ちょっと泣いた。亮平にとってはよくある海外への渡航で、なんてことはないのかもしれないが、和紗にとっては、大事件だ。出発くらい見送ってほしかった。
「【小説】ひと夏の恋、永遠の恋。/恋愛部長」のページです。デイリーニュースオンラインは、恋愛部長の「ダメな恋ほど愛おしい」イイ男友達以上恋人未満片思い小説女子などの最新ニュースを毎日配信しています。
ページの先頭へ戻る