【小説】ひと夏の恋、永遠の恋。/恋愛部長 (4/16ページ)

ハウコレ



これが、最後になるだろう・・・・・・。和紗は、そう思った。

亮平とは、はっきり別れられなかったけれど、物理的に距離を開ければ、きっと離れてしまうだろう。それは、2人にとって、きっと良いことなのだ。

自分から手を放すには、和紗はまだ亮平のことを好きでいすぎたから。■パリでの生活

パリでの生活

パリに着いてから、しばらくは、語学学校へ通ったり、師匠の知り合いのフランス人デザイナーのもとでインターンのような仕事を始めたりして、目が回るほど忙しかった。見るものすべてが新鮮で、行きたい場所、見たいものが次々現れ、毎日寝る間も惜しいくらいだった。

パリの街は、見るもの見るものきらびやかで、細部まで精緻で美しく、和紗はすぐにこの街に恋をした。

亮平への連絡も、ふと気づけば1か月過ぎて、亮平からのご機嫌伺いメールを見るまで本当に忘れていた。

物理的な距離と時間と言うのは恋を上手に風化させてくれる。

和紗は、亮平からのメールを受け取っても、ちっとも胸が躍らない自分に気づいていた。まるで日本を離れたとたん、自分を捕えていた重苦しい磁場から逃れ出ることができたように。心の底から、亮平のことがどうでもよくなっていた。

だから、亮平へのメールも、もらってから1週間以上経ってから、形式的に返しただけだった。「毎日忙しく元気にやってます」それだけ書いて送った。

亮平は、それが不満だったのか、むっつり黙り込んだまま、メールも電話も寄こすことはなかった。

パリは、花盛りの春から、いよいよ夏へと向かうところだった。日々日差しが強まり、街路樹の緑は濃く生い茂って、深い青空にあおあおとした匂いをまき散らしていた。

フランス人デザイナーの雇い主が、夏のバカンスは、ニースに避暑に出かける、と言い出したので、和紗も、用はないが南仏のほうへ旅行することにした。

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