【小説】時間の奴隷/恋愛部長 (2/11ページ)
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恋愛部長の「ダメな恋ほど愛おしい」
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失恋
舞は、暗い気持ちで、メッセージアプリのアイコンをにらむ。
付き合い始めた学生時代は、どちらかと言うと一真のほうが舞といっしょに居たがった。舞は、自分の時間がほしかったので、いつでも居場所を確かめて、いっしょに居ようとする一真が少しうっとおしく思うこともあった。
「少し距離を置こうよ」なんて、距離の意味もわからずに一真に告げて、涙目にさせてしまったこともある。あの頃が、まるで何十年も昔のことのようだ。
2人そろって大学を卒業して社会に出て、お互いにやりたかった仕事に就いた。舞は、それほど忙しくはない会社で広報の仕事に就き、一真は激務で知られる金融コンサルティングの仕事に就いた。
学生時代は、たわいもない議題で朝まで討論したりして、時には言い負かしたりもしていた一真が、たった数年のうちに、自分よりもずっと先を走っている気がする。たぶん、仕事時間の総量で言ったら、自分の業務時間の10倍くらい、一真は働いているんじゃないかと思う。
一真の業界の特徴だとは思うが、仕事の結果に対するハードルは新人だろうが容赦なく高い。実際に会社に申告する時間よりもずっと長く仕事をして、ようやく先輩たちの「普通」に追いつくんだ、と一真は語っていた。
その頃はまだ、仕事にやりがいがあって、目がキラキラしていたし、舞に、職場の雰囲気を語れるだけの気持ちの「余裕」は残っていた。
でも、2年目、3年目になるにつれ、一真の表情からは、イキイキしたものは失われていった。ただただ日々の激務に追われ、寝ないまま次の仕事に入ることも増えた。
寝ていなければ仕事の効率も落ちるし、凡ミスも増える。それは刻一刻と動くシビアな数字データを扱う一真の仕事では死を意味したので、一真は必死で眠りと格闘し、わずかな時間を休息に充てるようになった。
舞は、その一部始終を聞いたわけではないけれど、どんどん目つきが変わって行き、別人になって行く一真を呆然と見ていた。