【小説】時間の奴隷/恋愛部長 (9/11ページ)

ハウコレ

俺はもう、無理だ」

「別れたいってこと? そうなの? 一真・・・・・・なんで」

一真は暗い目を上げて、心底疲れたような声で言った。

「お前がつらいって言ったんじゃないか。

だから、もうやめよう。もう、俺にはお前を幸せにできる自信ないんだよ」

舞は、そこで初めて、はっきりと自分の心を知った。絶対に別れたくない、という気持ちを。そうだ、初めから、別れる気なんかなかった。なのに、なんで。一真を追いつめるようなことを言ったんだろう。

「やだ・・・・・・嘘。やだよ。別れたくないよ。一真、別れたくなんかないよ」

一真に取りついたが、もう遅かった。一真は、舞を振り切って、立ち上がった。

「もう、俺なんか忘れてくれ。俺が悪いんだ。俺、お前の期待には絶対に応えられないから」

「やだ・・・・・・待ってよ。一真。もう一度考え直してよ。私、もう泣き言言ったりしないから。文句言ったりしない。だからお願い・・・・・・!」

舞は泣きながら去って行く一真の背中に叫んだ。でも、一真は振り返りもせずに、玄関に立って、肩をふるわせて、言った。

「ごめん、舞」

そして、飛び出そうとした舞の目の前で、アパートのドアが、非情にもガチャン! と音を立てて閉じられた。

「やだよ、一真――――! うわああああ」

舞は玄関に泣き崩れた。

スマホを見る女性

あれから、5年。ずっと一真のことは忘れられなかった。

何度も何度も、自分のしたことを思い返しては、記憶の中の自分を呪い殺したい気持ちになった。なんであんな風に疲れ切った一真を追いつめてしまったのか、せめて、「また今度会って話そう」という言葉を受け入れられなかったのか、自分を責め続けた。

男の我慢の気持ちは、水をいっぱい張った甕(かめ)のようなものなのだ。

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