【小説】国芳になる日まで 〜吉原花魁と歌川国芳の恋〜第30話 (4/11ページ)

Japaaan

今更気がついたが、英泉の描く女の目は英泉自身の目にそっくりである。見るからに捻くれていて、しかし、強い。

 

 

「国芳もあーしと同んなじさ。あーしとこいつア、目指すは同んなじ梁山泊だ。江戸中の絵師が同じ場所を目指して、いつか一つに集結して面白い物をどんどん作って、江戸中に溢れるでっけえ笑い声で世の中をひっくり返してやる」

 

「国芳はんも?」

 

みつは覗き込むように英泉を見た。

 

「ああ。安心しろ」

 

英泉が僅かに口もとを緩めて微笑んだ。

 

「あーしが必ず、共にゆく」。

 

国芳を連れて。

 

英泉の言葉を聞いたみつは一瞬泣きそうな表情をし、それから滲むような笑顔で微笑った。

 

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歌川芳虎「東都名所八景之内 両国橋秋月」国立国会図書館蔵

 

 

 

両国橋の中腹。

 

国芳はひたすら絵を描いている。

 

橋の上で、食事も水も睡眠もろくに摂らず、昼も夜もなく描いている。

男の前には紙と幾つも並んだ絵皿、大小様々な筆。

それだけである。

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