【小説】国芳になる日まで 〜吉原花魁と歌川国芳の恋〜第30話 (9/11ページ)
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だが、大半は両国橋の上で通りかかった名も知らねえ人達だ」
「両国橋・・・・・・」
初代 歌川豊国「江戸両国すずみの図」国立国会図書館蔵
「あすこにはいろんな人間が通る。どいつもこいつもろくでもねえ奴らばっかりだが、絵を描いていると誰彼となく寄ってきて、声を掛けてくれた。そいつら一人一人に出来上がった絵を渡してお願いしたのさ。八朔の道中の日に、わっちの描いたこの水滸伝の百八の豪傑を持って京町一丁目岡本屋の紫野花魁に見せてやっつくれって」
「それで皆、あの絵を持って本当に来てくれたの・・・・・・?」
「そうだ。この江戸ア、おみつ、皆あったけえよ」
「あたし、国芳はんが今まで歩いてきた道を一緒に歩いているみたいだった。しかもこれ、一つ一つすごく細かく描きこまれてる・・・・・・」
「おめえになら、見えると思ってな」
「え?」
「墨をたくさんの濃淡に磨り分けて、同じ色の中にも角度や光の加減で模様が浮かぶように描いた。正面摺りみてえなもんだな。おめえがくれた手ぬぐいが、そういうやり方もあるって事を教えてくれた」
「そっか、」
みつは濡れた目を甲で拭いながら言った。
「あたし、役に立てたんだ」
「役立つどころか、ぜエんぶ、めえのお陰だ。