【小説】国芳になる日まで 〜吉原花魁と歌川国芳の恋〜第31話 (18/19ページ)
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「芳さん!芳さん!起きろ!」
佐吉の長屋の奥で蓑虫(みのむし)のように寝ていた国芳のもとに、佐吉が転ぶようにして飛び込んできた。
「なんとかッてえ版元が、会いに来てるよ!」
「んあ?」
・・・・・・
文政九年、早春。
涎を食って寝ていた国芳のもとに、米沢町の版元、加賀屋吉兵衛が訪れた。
加賀屋は去年一度国芳が自ら画稿を持ち込み、突き返された苦い思い出がある。
「こりゃアこりゃア、遠いところからわざわざ、どちらさんでしたっけ」
国芳はそっけなくあいさつした。一度すげなくされた問屋に、こびへつらう愛想は持ち合わせていない。吉兵衛は去年と変わらず手をすりながら、
「吉原での水滸伝の件、お噂は聞き及んでおりますよ。さすがは、豊国先生の門下の国芳さんですな」
あれだけ冷たく突っぱねておきながら、何がさすがだ。国芳は棄き捨てたい気持ちになった。
「何の用でエ」
「そう目くじら立てずに、ね。実は、あなたに頼みたい仕事ができまして・・・・・・」
「なんでエ今更」
「まあまあ、そうおっしゃらず聞いてくだせえやし。あの時には理由があったのです。