【小説】国芳になる日まで 〜吉原花魁と歌川国芳の恋〜第31話 (10/19ページ)

Japaaan

何でもいい、言ってみろ」

わっちゃア、と国芳は少し考えてから、口を開いた。

「わっちゃア浮世絵が大好きだ。浮世絵師を辞めるつもりもねえ。だが、焦りもある。今のままでいいのかって。今まで誰も描いた事のねえような面白え浮世絵を作らねえと、こういう異国の浮世絵師に吞み込まれちまうんじゃねえのかって」

雷震はプッと噴き出した。国芳が異国の絵描きの事も浮世絵師、と言ったのが可愛く思えたのだろう。

「そうだ。その通りだ。ようやくそうした目を持った奴が現れた」

「はあ」

「若え野郎は何かにつけてはやれ豊国だ国貞だ広重だ、そんなところを目指してちゃア、この国の浮世絵はやがて滅びちまう」

国芳はさりげなく歌川派を馬鹿にされた気がして少し青ざめた。しかし、目の前の精緻な西洋画を見るにつけ、雷震が言う事があながち嘘ではないのも分かる。雷震は構う事なく、続ける。

「俺達が目指すなア、もちろん分かってんだろう。なあ、国芳」

「異国の絵・・・・・・?」

そう言った国芳の目ははるか遠くを見据え、青みがかって見えるほどに澄んで輝いた。

「そうだ、そうとも」

雷震は手を打って喜んだ。

「しかも、ただ目指すだけじゃあつまらねえ。

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