【小説】国芳になる日まで 〜吉原花魁と歌川国芳の恋〜第31話 (3/19ページ)
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一歩足を踏み出した途端、下からわあっと吹き上げる旋風で周りの音が全て掻き消され、一種の無音状態が生まれた。その中で、舞い上がった無数の金色の枯葉が陽光に照り輝きながら、空からきらきら降ってきた。
(金色の、雪だ。・・・・・・)
国芳は、思った。
その瞬間、この世は風と国芳と英泉と、ただ三人だけになったようにも感じられた。
(おみつにも、この景色を分けてやりてエな)。・・・・・・
いつかみつを身請けして、そうした暁(あかつき)にはこの美しい凩の冬を二人揃って歩くだろう。
そういう日の事を想像すると、胸の奥が火吹き竹で吹かれたように温かくなった。
「冷えるなア」
隣で英泉が懐に手を入れたのに対して、国芳は口元を緩めた。
「わっちゃアこの褞袍(どてら)が温ッたかくて、ちいと汗ばみますよ」
「あーた、先達てもそれじゃアなかったかい」
国芳の格子柄の褞袍を指して、英泉は嫌味ったらしく言った。
「秋と冬と春はこれ一枚でさア」
「残るのア夏だけじゃねえか。別のを一枚買ってやろう。そうだな、あーたにゃア気味の悪い地獄絵図の褞袍なんか良さそうだ」
ケケケッとけたたましく笑ったのは国芳の方だった。
「そいつア面白え。