【小説】国芳になる日まで 〜吉原花魁と歌川国芳の恋〜第31話 (6/19ページ)

Japaaan

 

 

「おめえ、名前は」

 

 

「国芳。歌川国芳」

 

 

国芳は名乗り、親父の傍にジリと膝を寄せた。老人はガンと乱暴に灰を落とし、眉をひそめて、

 

 

「歌川。・・・・・・ハハア、もしやテメエ、熊んとこのかえ」

 

 

「豊国をご存知ですか。わっちの師匠の」

 

 

「ご存知も何も、こちとらア奇人変人呼ばわりされたんでね、忘れようにも腹が立って忘れらりゃしねえ。アアその『わっち』という言い方も、熊に似てやがる。嫌だねえ」

 

 

「熊さんがあんたにそんな事を?爺さん、一体何者だい」

 

 

「何者と言われると、困っちまわア。しいて言やア、曲者って所かねエ」

 

 

ケケケッという奇妙な笑い声が、英泉と良く似ている。

 

 

 

「めんどくせえな、この爺さん」

 

 

国芳が英泉にこっそり囁くと、

 

 

「だろう。この人ア、一筋縄じゃアいかねえ。なんせ稀代の《ふらふら》だ」

 

 

「《ふらふら》ちゃアなんでえ」

 

 

老人が伸びっぱなしのぼさぼさの眉をひそめた。

 

 

「《ふらふら》たア、あーたみてえな人の事ですよ。

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