【小説】誰かと誰かと私のあなた/恋愛部長 (3/13ページ)
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恋愛部長の「ダメな恋ほど愛おしい」
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「うん、また連絡するよ」
ちゅっと、軽いキスをして、佑は出ていく。両腕の中に、佑の体温を抱いたまま、望海は夜の真ん中に1人残される。その瞬間の頼りなさは、いつまで経っても慣れない。
――――家に帰るなんて、嘘。
望海は、佑がさっきまで寝転んでいたベッドにもぐりこんだ。まだ彼の匂いが残っている。分かっている。メールでさっき約束していた。
「もうじき残業終わりそう」「今から家行っていい?」そんな文字が吹き出し型に浮かんでいた。
よく知っている、佑の言葉。佑の口調。でも、それは自分に宛てたものじゃない。それがなんだか不思議な気持ちだ。
この世界に、もう1人、横山佑という男が存在するような。もしかしたら、そうなのかもしれない。佑はもう一人いるのかもしれない。望海は、佑の残り香に包まれて眠気に襲われながら埒もないことを考える。
望海のうちから一歩外に出ると、その佑はもう、望海の知る佑ではない。誰か別の女の知る佑なのだ。きっと、そういうこと。
胸に走る鈍い痛みを抱いて、望海は眠りの中に落ちて行った。
佑が自分以外にも女がいることは、付き合ってから半年くらい経ってようやく気付いた。なかなか佑の家に入れてくれないことや、友達と偶然会っても紹介してくれないこと、なぜか土日や夜に連絡がつかない時間があること、いろいろなことが積もり積もって、いやでもその結論に行きついた。
クリスマスと、年末年始、そして、バレンタインと続いたのちに、佑の誕生日がやってくる。クリスマスも、だいぶ前から仕事だと言われて、会えなかった。年末年始は、実家に帰っていたと言って、ケータイもつながらず、「明けましておめでとう」の一言も返ってこなかった。
そしてバレンタインも、昼間ちょっと会えた時にチョコレートを渡したっきりだった。誕生日こそは、と何週間も前から様子を窺っていたが、直前で、出張が入ったと言われた。
友人たちはみな、口をそろえて「おかしい」と言う。
自分でも、信じようとするたびに疑惑が膨らんでいって、もう限界だった。初めて佑のケータイをこっそり盗み見たのはそのころだった。